米寿を迎えてた時、いろいろ役職が重なって、オーバーワークとなり、脳梗塞を発症し、人生はじめての入院生活を余儀なくされた。病院のベットの上で、過ごすとてつもない空虚の時間!!
自然とこれまでの自分を振り返る時間が持てた。今迄自分が立ち止まらないで、がむしゃらに歩いてきた時間は何だったのだろうか?
窓の外にうつる新緑が芽生える自然の美しさに見とれているといつの間にか緑に溶け込んで、ゆったりと過ごしているこの心地よさ!自分がずーと忘れていた田舎の風景、幼いころの思い出が走馬灯のように流れていき、いつしか夢の世界に落ちていく体が求めていた休養の時間,此れまでの溜りに溜まった塵垢がスーと溶けてなくなる一瞬でした。
よし現実から逃避しよう!そう思い立って、下田の山奥に一人逃避した。
誰と話すこともなく、日長一日海辺に糸を垂れ、波の音に揺さぶられ、時が過ぎていく時間は、本当に快適だった。
自分が一生を終えて、永遠の眠りにつくとき、俺は本当に幸せだった。「人生に悔いはなかった」と思って目をつむれるのはどういう状態なのか?考え続けた。

母親が、天寿を全うして、私の腕の中で、ぬくもりがスーと抜けていく瞬間が浮かんできて、穏やかで、何か微笑みかけているような人生の終末姿こそ、私が求めているそのものと気づいたのでした。